【くまさん横浜の歩行訓練】
【くまさん横浜の歩行訓練】
くまさん横浜では、中高生のクラス「くまさん横浜NEXT」で、よく「歩行訓練」を実施しています。
「ただ歩くだけ?」と思われる方もいるかも知れませんが、実は「歩行」は障害ある子達にとっては訓練が必要な活動、なのです。
「歩く」ことは、人間の空間移動の基礎的な運動になりますが、同時並行的にいろいろな活動を行うことで成立しています。
まず、歩くことそれ自体が、手、足、腰など体の各部位の動きを円滑に連動させつつ、かつ重心バランスを保ちながら前方に進むという身体運動です。
実はそれだけでも重度の障害の子にとっては大変です。「足への体重のかかり具合」とか「体軸の角度」などを敏感に感じ取りつつ、自分の姿勢を常に修正し、一定のスピードとリズムで歩を進めていくわけですが、感覚統合が完成していない発達段階ではこれはなかなか難しいのです。
その上、道にはいろいろなものがあります。歩道と車道には段差がありますし、場合によっては坂道や階段などもあります。道に石ころとかゴミなどが落ちていることもありますから、いつもそうしたものを見ながら確認し、上手に避けながら歩かないと、時に転んでしまったりすることもあるわけです。
さらに「歩道上の空間」をきちんと三次元的に認知し、適切な位置に身体を置く必要があります。
道端にある「植木」や住宅の「塀」「壁」などと一定の距離を保たないといけないですし、向こう側から人や自転車が来たら、ぶつからずにすれ違わないといけません。かと言って車道にはみ出ては危険が伴います。これには空間距離の認識だけでなく、適切なタイミングと位置で止まったり、体の向きや角度を変えたりする身体操作も求められるのです。
こう考えると、実は私達が何気なくふだんしている「歩行」という運動は、大変に複雑かつ精緻な認識活動や身体操作の集積であることが分かると思います。
くまさん横浜では、子どもたちの路上での歩行訓練は、職員が手をつないで行います。したがって職員と子供が1:1か、あるいは多くても1:2以内でないとなかなか実施できない訓練でもあります。人手をより多く割いて細かい観察とフォローをする、くまさん横浜ならではの活動です。
この日は約20分程の歩行訓練でしたが、途中に坂や階段があるコースを選びました。ご覧のとおり爽やかな秋晴れのもと、子どもたちのペースに合わせて、ゆっくりと急がずに歩きました。
くまさん横浜では、こうした「子どもたちが将来必要とする」心身の訓練をコツコツと行っています。正直、今日の散歩が来週すぐ何かに役立つ、ということはありません。しかしふだんからこうしたことをコツコツ繰り返すことによって、子どもたちの身体が鍛えられ、認識が成長し、大人になった時に大きな差が出てくるものであることを、私達は信じています。
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