【軽い子が楽なわけじゃない】

【軽い子が楽なわけじゃない】

 くまさん横浜は知的障害児の事業所です。

 知的障害には「重い/軽い」を判定する16項目の調査指標があります。たとえば「説明の理解」「大声・奇声を出す」「異食行動」「多動・行動停止」・・・などがどのくらいの頻度で起こるかを調査し、いわゆる「重い子/軽い子」の判断をします。この指標に該当するいわゆる「重い子」は「指標該当児」と呼ばれます。

 またそれはと別に「療育手帳」が発行されており(横浜市では「愛の手帳」という名前になっています。)、また別に障害の重い/軽いでランクが付けられています。横浜市では

 A1・・・最重度  A2・・・重度  B1・・・中度  B2・・・軽度

 とA1~B2の4つのランクに分かれています。

 お子さんの障害の重い/軽いは、この両方によって判断されますが、この両方が乖離することはあまりありません。大まかに言って「指標該当児」は「A1~A2」です。

 実はくまさん横浜はこの重い子が利用児童全体の約90%を超えている、いわゆる「重い子の多い事業所」です。もちろん大変なこともたくさんあり、いわゆる「強度行動障害」に該当する子が多いです。しかし、では「(障害が)軽い子」が「見るのが楽」かというとそうではありません。
 

 例えば言葉を話すことができて大人と会話ができても、それをきちんと自己表現や社会性と結びつけられるかは別の能力です。例えば「挨拶」「自己紹介」だけは「音」として暗記してお話できたとしても、それが話せる知的水準で他のことができるかというとそうでもないのです(だから障害なのです)。

 そうすると「お話ができるだけに」健常児並みの能力を期待されてしまい、かえって「生きづらい」ことになったりするケースもあるのです。

 そういう意味では、障害を持つ全ての子供達が「生きづらい」のです。何で生きづらいかその「課目」は、それぞれの子によって違います。自分一人で排泄や食事ができない(介助が必要)子もいれば、言葉は喋れるけどひらがなが書けない、文字が読めないという悩みもあります。さらに「数字は読めるけど時計は読めない」とか「言っていることは理解できるけど、自分の気持ちを上手にコントロールできずにすぐに暴力に訴えたり暴言を吐いたりしてしまう」という子どももいます。そう、能力の分野と差違はあれど、どの子も同様に「生きづらい」問題を抱えているのです。

 こうしてみると、人間の社会で生きていくには、ふだんから高度な「知的作業」が求められていることを実感します。

 テレビを見るにしてもリモコンの使い方がわからないとチャンネルも替えられません。お食事するにしても着替えるにしてもお風呂に入るにしても、それぞれ必要な身体動作を上手にこなさないといけません。

 さらに「信号が青になるまで渡らない」とか「(暑いからといって)人前でむやみに服を脱がない」とか「(自分がはしゃぎたくても)人前で大きな声を出さない」とか、「(落ちてるものに興味があっても)拾ったものを口に入れない」とか・・・社会で生きていくのに無数のたくさんの知的なことを、子どもたちは覚えていかなければなりません。

 くまさん横浜ではそれぞれの障害特性に応じ、こうしたことを一つ一つ根気よく、子どもたちに学んでいっていただきます。将来、くまさんを卒業した時に、少しでも彼らが「生きやすく」なってもらうためにです。できるだけ楽しみながら、子どもたちがこうしたことを一つでも身につけて、障害に負けない人生を送っていってほしいと職員一同願っています。


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