【つくし摘み】

【つくし摘み】

 だんだん暖かくなり、春の陽気の日が少しずつ増えてきました。

 先日、お天気の良い日にお外遊びに行ったとき、つくしを見つけました。小学1年のM君が、珍しげにじっと見つめていたので「抜いてごらん!」と勧めてみると、プチプチと引き抜いてきて、コンクリートの上に集め始めました。草でもない、木でもない、竹でもない、ちょっと不思議な植物にとても興味を惹かれたようです。土手から次々と抜いてきて、頭をちぎってみたり、茎を折ってみたりいろいろ試します(^_^)。

 こうした時くまさんの職員は、ちょっと立ち止まって子供の行動を観察します。何か危険なことがない限り「それはダメ!」「やめて!」などと言わず、注意深くじっと見守りながら、多少手が汚れてもちらかっても、しばらくの間、子供の「好きにしてもらう」ようにしています。

 というのは、子供はこうした時に受ける五感刺激の繰り返しによって、幼い彼らの脳の発達を促しているからです。そうして憶えた「手の感触」「映像や匂いの記憶」が体験として積み重なっていくことで、次回以降の行動の選択肢が豊かになっていくのですね。

 障がいを持った子供達は「言語」によって物事を理解することが苦手な子が多いのですが(まったく話さない子もいます)、それは私達が日頃何気なく使う「言語」は、抽象化された思考空間の中でのやり取りとなるため、少し高い知的レベルを必要とするからです(大脳のウェルニッケ野を使います)。一方で人間は日常の中で、言語でなく「感覚」で理解することも多く、そうした力を養成するためには「五感を刺激して色々な感覚を体験する」ことがとても重要なのです。

 この日もM君は小一時間、つくしを摘んだり、ちぎって分解してみたり、根っこの泥をいじってみたり、放り投げてみたり・・・と色々やって、ふしぎな「つくしの存在」をたっぷりと楽しんだ午後になりました(笑)。飽きるまで遊んだあとにお部屋に戻り、きちんと手を洗っておやつの時間になりました。ちなみにこの日、M君には摘んだつくしをお母様に持ち帰っていただきました。

 くまさんでは、障がいを持った子供達が「興味を持てること」「楽しめること」を、将来の成長につなげる活動を行っています。子供達の成長は早く、その意味では日常のすべての時間が「成長のためのトレーニング時間」です。くまさんで過ごす時間が、子供達の将来にきちんとつながっていけていること。このことが職員たちの目標であり喜びとするところです(^_^)。


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